シュー自身も何か、手はないかと魔法の書物をあさり、試してみたが効き目はなかった。

「レイド様はまだなのですか?」

「あぁ……最悪の場合、レイド様とフィルが人喰いに……」

「そんな考えをするでない!」

スーハはヴァィに叱られた。

「すみません……!」

「不安になるのは無理ない。しかし、今はリィナ様とレイドたちの無事を願え。
ヴァィは冷静にそう促すが、彼自身が一番落ち着いてられないのだ。

王様に代わって私がお守りしなくてはならないのに……!

ヴァィは責任感の強い男だ。

「どうか……リィナ様を、レイド様をお助け下さい……。」



空から、レイドを観察していた者がいた。

「大きくなったなぁ…。」

彼はそう呟き、まっ逆さまに落ちていった。

ドオォッッン!!

「な、なんだ?!」

ヒヒーンッ!!

地面がいきなり砂ぼこりを撒き散らした。

馬はビックリして慌てだす。

「大丈夫だ!落ち着け!」

レイドは手綱を引っ張った。

馬は止まった。

「久々だな、レイド。」

砂ぼこりから現れたのは、褐色の肌に長く綺麗な黒髪をした、黒い服の男。

左肩に十字架に亀裂の入った刺青。