リィナはこの大陸では有名な王女であった。

8年前の“異人の襲撃”で、ルーゼンの名は世に広がったのだった。

「フィルが、どんな病でも治せる魔術師がここにいると教えてくれたんだ。アクリスのことなんだろ?」

「あの方がそうおっしゃたのですか……?」

「あぁ。道案内を頼んだ。」

アクリスは、フィルが休んでいる部屋の方の壁を眺めた。

「頼む!リィナの毒を治療してくれ!」

「し、しかし……ここからルーゼンまでは15時間はかかるでしょう?間に合うのですか……?」

「頼む!まだ時間はあるはずだ!やる前から諦めないでくれ!」

レイドは藁を掴むように頼んだ。

今はこれしかない。

彼女に託すしか……。

「お願いだ!リィナを助けてくれ!!!」

ガバッ!!

レイドは土下座した。

「あ、頭を上げてください!レイド様、そんなアタシ……」

「時間を賭ける価値はある!お願いだ!代償は何でも言うてくれ!!」

レイドは額を床にずっと付けて頭を下げ続けた。

アクリスは動揺しながら悩んだ。

なぜそんなに悩むのか?