「西の国に、どんな病でも怪我でも治せる魔術師がいると聞いたことがある。」

発したのはフィルだった。

「居たのか?」

「あぁ、騒動を他の騎士から聞いてな。俺達の王女が病で倒れたのをほっとけるか。」

シューやヴァィは、彼の言葉に驚いた。

なんていう心変わりをしたんだ―。

嬉しいが、今はそれどこではない。

部屋には大勢の騎士とメイドが来ている。

「リィナ様!」

「王女様!目を覚ましてください!」

こんなにも国に愛されているリィナを、護れなかった自分に腹が立った。

「西の国とか言ったな……?」

「西の国、ネーストのパルスの街だ。」

「遠いか?」

「馬を走らせても、片道に半日は掛かる。今から出たら朝方には着くだろう。」

まだ間に合う……!

レイドは決心した。

「今からそこに行ってくる。リィナを頼んだ。」

「待て!夜は危ない!」

フィルはレイドを止めた。

「夜になると、ネーストに続く平原に、人喰いの化け物が出ると聞いた!朝まで待った方がいい!」

「それじゃぁ間に合わねぇよ!!!」