ちゆまど―世界は全て君のために―



今となっては東しか残っていないというベルク帝国。そこも確か小さな国のはずだ。


「私の召還物が倒されたのが納得できませんわ。“生きる大聖堂”(カテドラル・ドラゴン)までもが帰ってこなかったのですから」


「かて……?」


「ドラゴンの一種だ。魔術が効かない、戦うとしたら物理だが、鱗がダイヤモンドよりも固くて剣なんか折れる」


「それじゃあ、誰も倒せないんじゃ」


「その通りですの。ですが、実際にあの子は帰ってこなかった。いったいどんな手を使ったのか……。死体さえも見つからないなんて……」


悔しそうに呟くシンシアさんは我が子でも失った気分なんだろう。ポチがマスターと心配げに呼ぶのを、無理して笑ってみせた。