あからさまに訳も分からない顔をするシンシアさんに、彼は補足した。
「ある事情ができて、その世界に行くことになった。そこでだ、不本意ながら、お前の力を借りたい」
「本当に不本意ですわね。なぜ、私があなたのために動かなければならないのです?第一、あなた自身がやれば良いでしょう。あなたとて世界を渡り歩けるのですから」
「今の俺にはできない」
「……なにか、事情がおありのようですね。お聞かせ願おうかしら。とても――」
にいと笑うシンシアさんに彼はあからさまに嫌な顔をした。
「楽しそう」
「……、お前に弱みを握られるのは嫌だが。俺は本来の体を無くした。その代償――彼女を軸にしたことで、力のほとんどが使えなくなった」


