返り血をなめとる――
『命を粗末にしたくないから』
先ほどまで。
「あー、やっぱり人間の血はいいねえ」
『命は重いんだ』
眩しいほどだったあの人が。
「カラスたちも喜んでいるよ」
暗い世界と同化した。
「なん、で……」
「ん?」
「なんで逃げようとした人たちまで殺したんですか!」
「……。そうか、ユーリちゃんは善人だったね。理解しなくていいよ」
「どういうことですか!あなたは先ほどまで、あんなに――命に対して軽視などしていなかったのに!」
「あれ、おかしいな。俺はいつだって、命は脆いと軽視しているよ」
笑う人が理解できなかった。
矛盾している。あんなにも命を大切にしていたはずなのに。


