ちゆまど―世界は全て君のために―



甲冑なんか意味ない。銀の鎧ごと肉を絶つ。


【僕の指名は普段悲しめない人を悲しませてあげることだとねー】


「退け、退けぇぇぇ!」


それを合図に騎士団たちが一斉に逃げ出した。


これで終わったかと思えば。


「ふざけすぎでしょ、それは」


指笛を鳴らすシュヴァルツさん。


「カー、ア゛ー」


どこからともなく、今度は正真正銘のカラスが現れた。


一羽じゃない。夜空が黒になるほどの群れだ。


「うわっ」


「なんだ、こいつら!」


逃げようとする騎士団に空から奇襲するカラスたち。


誰一人として逃げられず。 逃げられないならと。


「餌は一匹も逃がさない」


笑う吸血鬼が、また血飛沫を起こす。