ちゆまど―世界は全て君のために―



【いつか見た夢の続きだ。僕はまだ寝ていたのに、君が起こすからお菓子の家も遠のいた】


歌が聞こえた。


とても陽気な。陽気な歌に負けず劣らず、楽しそうな顔の吸血鬼がいた。


【だから君を憎もうか。悲しいから憎むんだ。首しめ、顎きり、目玉えぐり。なんで泣くのか、君は真っ赤な涙でおめかしをした】


童話調のメロディのくせして、歌詞は残酷だった。


いや、それ以上に残酷なのは。


【なんて綺麗だと僕は歓喜した。人は皆、死ぬとき一生の――】


「ぎ、あああっ」


歌に混じる悲鳴。

シュヴァルツさんの刃が容赦なく相手を突き刺しては、えぐる。


返り血の雨が降り注ぐ。


「あー、なんだっけ……そうそう、【悲しみを表現した。僕はそこで気づいたんだ】」