ちゆまど―世界は全て君のために―



「近衛師団、対陣を組め!魔術師団、“全てを穿つ牙”(フェンリル)用意!」


「はっ」


紫のローブを来た人が集まる。


何かを呟けば、黒い霧が生まれた。


密集する黒霧がある形を模索する。


四本足の獣だ。


続き、形から色が与えられた。真っ赤だった。毛も皮もない獣のよう。肉の筋がむき出しで、見ていて気持ち悪かった。


形は狼なのに、見目が悪すぎる。


それが五頭。こちらに犬歯をむき出しにしていた。


「フェンリルか。雑魚獣だ」


「ねえ、あれは楽なんだけどさ」


見れば、剣を持つ人たちが己が刃に水をかけていた。


恐らく聖水だろう。盾は持たずに変わりに小さな水が入った瓶を持っている。