ちゆまど―世界は全て君のために―



(四)


「あれがそうですか……」


こそこそと茂みの中から状況を探る。


村から三十分ほど南にくだった雑木林の中。テントがいくつも張ってあった。


甲冑を着た騎士が、見張り番をしている。


私たちを見逃している時点で見張りの役を果たしてないが。


「そうそう。数は五十弱かなあ」


「五十程度なら、お前一人でやればいいじゃないか」


「えー、だってあいつら聖水持っているんだもの」


「どうせ、清めた程度の水だろう。火傷にもならないはずだが」


「ところがね、この前うっかり見つかったときにかけられたんだけどさ。これ見てよー」


捲った袖口、あらわになった腕はやけ爛れていた。


「うわ、ひどい……」


「吸血鬼にもとから備わっている再生はどうした」