「シュヴァルツさんはやはりいい人です」
初めて見た。ここまで食物を慈しめる人を見たのは。
食べ物の尊厳を忘れていない。死のうとも、もとは生きていた命なんだ。
それを彼はよく分かっている。
「そういえば、シィちゃんは?」
「あ、呼びますか」
「いいよ、いなくても。君から伝えといて。ユーリちゃんの言うことならなんでも聞きそうだから」
「聞いてくれるだけなら苦労しないんですけどね……」
「たまには飴もやらなきゃダメだよー」
「考えておきますよ」
軽く笑うシュヴァルツさんがさてと、と本題に入る。
「東ベルク帝国って分かるかな」
「知ってますよ」
騎士団がいるという古式な国家だ。
伝統を重んじ、王に絶対の忠義を誓う国。


