ちゆまど―世界は全て君のために―



もう空っぽの毛皮しかない動物が悲しく見えた。


「食事だ、ただの。血肉であれば、人間じゃなくてもいいんでね。二号様がさ、あまり人を襲うようなら縛ると言ったから、仕方がなく獣を食べているだけなんだ。俺に牙むく獣をね」


「シュヴァルツさん……」


「人を襲うのが猛獣だ。たまたま森を歩いていた俺はそれらに出会い、狩っていただけ。こいつもね、俺を襲おうとしたからこうなったんだ」


綺麗に中身がなくなった毛皮は綺麗なものだった。


私も思わず触る。


「なんで、毛皮を?」


「命を粗末にしたくないから」


ああ、この人は。と眩しいものに出会ったかのような気分になった。


「こいつらも生きていくために俺を襲ったんだ。俺の肉を自分なり子なりに食わせるために。食事はね、何かを殺して何かを生かすという行為なんだ。

粗末にはしたくない。命は重いんだ。命が入っていた器を俺は糧とし、生きていく。せめてもの償いなのかもしれない、残さず余さず食し、食べれない部分はこうして無駄にならないように活用するんだ」