「まったく……」
困ったババアだと、シブリールさんがあきれ返る。
二人っきりになった。これは質問する機会だと口が動く。
「シブリールさんは……いいんですか」
「何が?」
「兄を見逃して……」
「ニ度も言うけど、ユリウスがあいつを救った時点で俺はあいつを殺す気はない。君がやったことが無駄になるからね」
「人を食べないという兄の言葉を信じますか」
「ユリウスは?」
「信じたいです……」
言葉は嘘をつくから確信が持てないが、信じたいになってしまう。
「そう、なら、俺も同じだ。俺はね、ユリウスの意思なんだ。君の決断で俺は物事を決める。もっとも、あいつがユリウスを殺すとなれば、問答無用で排除するけどね。特にそんな様子もないし」


