(二)
イナディアルは余興を好む。
毎日が退屈だったのだ、娯楽を楽しみたいと思い、何が始まるのかと二人を見守った。
「これはこれは」
透視の眼、金の眼で見たことには賞賛を覚える。
力尽きたかのように眠るユリウスを抱える男。金の眼なしでも分かるほど、魔力が溢れていた。
見ただけで唾液が出る。イナディアルにとって魔力は肉汁に近い。
「そうか、君、“世界殺しの魔導師”か」
タクトをぽんと手のひらで弾かせて、謎がとけたかのようなスッキリ感を味わった。
「神々の敵にして、最高神判にかけられし英雄。次元の逃亡者にして、不老の魔導師。固まった器よ、この世界に逃げていたのか」
「……」
イナディアルの言葉はノイズのように聞き流し、シブリールは彼女をそっと寝かせた。
すぐに終わるよ、と囁いて。


