ちゆまど―世界は全て君のために―



寝室の扉を開ければ、真っ暗だった。


驚く、窓を見れば明るいのに。扉の前に黒い壁があるみたいだ。


なにこれと、恐る恐る指先で触れれば、埋もれた。反射的に手を引っ込める。


見ている内に黒に文字が浮かんできた。


「お……い……で?」


読む内に文字は広がる。


『おいで。愛しい子よ。時は満ちた。今こそ君の願いを叶えよう』


そう文章を読むなり、文字が黒に濁って見えなくなった。


兄さんの顔がよぎる。


「この先に……」


震える指を押さえて、悪い想像を消す。


兄さんと話したい。


それは偽りない思いだ。


『君を殺そうとしている』


シブリールさんの言葉を思い出すが、話したいという気持ちに押し潰された。