ちゆまど―世界は全て君のために―



「残った衣服から、イナディアル君は、いないと分かったんじゃが、探しても見つからなかったんよ。盗賊にさらわれたんじゃろうな」


村の人たちの見解は盗賊によるものだった。


それもそうだろう。まさか小さい男の子が犯人とは思わない。


「不思議なことに、ユーリちゃんは、イナディアル君のことを、綺麗に忘れておった。そこで、村のもんさ集めて、話し合ったんよ。『ユーリちゃんにこれ以上、苦しい思いはさせない』。

両親だけでなく、お兄ちゃんまで、いなくなったとあれば、より悲しむと思ってな。みんなして口を閉じたんよ」


それが村人たちが十五年間隠していたことだった。


語り部は黙る。

思い出したせいか、ゼナの目には微かに涙がたまっていた。


「本当に、陰惨だった……」