ちゆまど―世界は全て君のために―



(――)


「朝、村のもんが診療所さ、行った後に、わしらも行ったんよ。信じたくは、なかった……。でも、目にした光景は、地獄だった。血だらけの部屋、飛び回るハエたち、死体はなかった。キャベさんみたいに衣服だけが残っていた」


ゼナの握られた手が震えていた。


「まだ生きているかもしんね、探せ。そうやって森の中さ、探したら、ユーリちゃんがいたんよ。血だらけで、どこか怪我しているのかと思ったら、無傷だった」


ユリウスの巻き戻しが起こったのだろうとシブリールは予測したが、あえて言わなかった。


「ユーリちゃんに、何が、あったか聞いても、答えてくれず、まるで人形みたいじゃった。初めて泣いたのは、両親のお葬式のとき、じゃった」


「兄についてはどうしたんです」