ちゆまど―世界は全て君のために―



お兄ちゃんが立ち上がる。私を見る目は盲信でもしているようだった。


「君はまだ食べないであげる。成長が楽しみだからね。食べ応えある体になってからの方が良さそうだ」


最後にお兄ちゃんは私の頭を撫でて。


「いつか必ず迎えにくるよ。父さんと母さんは残さず食べるからね、君の願いのずっと一緒にいたいをかなえなきゃ。じゃあ、いつかまた会える日まで」


振り返る間際。


「いい子でいるんだよ」


極上の笑顔でそう言った。


去っていく人。

追いかけることはしない、またあの激痛がくると思ったから。


――私は、見捨てたのだ。両親を。


食べると言った彼を止めなかった、痛いのが嫌で。


助けを呼ぶのも思い付かない。この場から動いたら、きっと死んでしまうと動けず――