ちゆまど―世界は全て君のために―



涙を流したままのお兄ちゃんは本当に嬉しそうだった。


「美味しい、美味しいよ、父さん!優しい父さんだからこそまろやかな味わいだよ」


母さんの首にくらいつく。


「ああ、母さんも美味しい。愛情が溢れている。なんて香ばしいんだ」


ハイエナみたいだった。二つの肉に交互に食らいついて。



「なんて僕は幸せなんだ!優しい両親をいただけるなんて!愛している、愛しているよ、世界で何よりも!もちろん――」


ぎょろりと丸い目が私を見た。


「ユリウス、君も愛しているよ」


そこで全てを呑み込んだ。


お兄ちゃんが二人を殺したんだと。


「お兄、ちゃん……」


「待っててね、二人が食べ終わったら次は君だ。ゆっくり味わって食べるから遅くなるかもしれないけど、そこにいるんだよ」