ちゆまど―世界は全て君のために―



「じゃあさ」


――やめて。


「みんな一つになろう」


――お願いだから。


「私たちはもう一つの家族じゃないか」


――見たくない。


「違うよ。本当に一つになるんだ」


――やめ、


「愛しているよ、父さん、母さん」


刹那を垣間見た。


最初、訳も分からず。赤くなったと認識した。


赤は二人の体から無尽蔵に吹き出ていた。


どさりと倒れた二人はぴくりとも動かなくなり。


「ずっと一緒だよ。僕の中でね」


真っ赤な両腕をしたお兄ちゃんだけが立っていた。


屈むお兄ちゃんはお父さんの首に食らいつく。


がじがじと歯をむき出しにして。


「ずっと夢見てたんだ、僕。父さん、母さんと血の繋がりが欲しいって。二人の血肉を食べれば、二人は僕の中にとどまるよね?ああ、嬉しい。ぞくぞくする、一口食べるごとに、二人が僕と一つになってくれる……!」