何も喋らなくなった二人に対して、お兄ちゃんは言った。
「父さんと母さんにはきっと理解できない。止められたって、もしも今後、あいつみたいな奴が現れたら僕は制裁するよ。――それが見たくないなら、僕を殺してよ」
私同様、二人は目を丸くした。
「何を言って――」
「僕は父さんと母さんに嫌われたくないんだ。けど、僕は二人が言う『いい子』にはなれないと思う。だから嫌われる前に死にたい。死ぬなら、愛する人の手で」
父さんがお兄ちゃんを叩いた。
驚くお兄ちゃんをよそに、お父さんは小さな体を抱きしめる。
「殺せるわけがない、嫌いになるわけがない、お前が何をしたって、それでも、お前は私たちの大切な息子なんだ!」
手離さないと言わんばかりにお父さんはお兄ちゃんを強く抱きしめる。


