「ああ、痛くない、痛くないよ」 まじないでもかけるみたいにお兄ちゃんは繰り返す。 血が出る私の手を取り、傷口を舐めた。 「ん、ユリウス。バイ菌は全部食べたからもう大丈夫だよ。あとは帰って、父さんたちに手当てしてもらおう」 ハンカチで傷口を巻いたお兄ちゃんは私をおんぶした。 えんえん泣き続けたからさぞやうるさかっただろう。 なのにお兄ちゃんはよしよしと優しかった。