泣いていたんだ。 「嬉しくても、涙って出るんだ」 当時は意味は分からなかったけど、分からないなりにお兄ちゃんの涙を拭いてあげていた。 「どうして泣いてるの、痛いの?」 「痛くない、痛くないよ……。でも止まらないんだ。ずっと一人でさまよっていたから」 「これからは一人じゃないぞ」 「そうよ、私たちがいるわ」 「家族全員、ずっと一緒にいよう!」 ――ああ、ダメだよ、父さん。 その言葉はいずれ、“酷い現実”になるのだから。