ちゆまど―世界は全て君のために―



誇ったように鼻を鳴らす男に、厄介な奴だとラグナロクは思ったが。


「手ぬるいぞ」


バラのツタが男に襲いかかる。


ことごとく男がタクトを振れば、地に落ちるがきりがない。


「どうした、肝心の魔術が追いついていないようだが」


「まいったなぁ」


諦めたように男は腕をおろした。ツタが絡まり、男は一歩も身動きが取れないよう。


「やはり“世界の終焉たる災厄”に挑むには、準備が足りなかったかあ」


失敗失敗と笑う男は、自分の置かれた状況が分かっていないみたいだった。


ただ。


「ユリウス、またあとで会おう。愛しているよ」


にっこりと笑った男。絡まったツタがほどけるなり、消えていった。


「取り逃がしたか」


ツタは腐っていた。

男のまがまがしさに耐えられなかったのだろう。