「くっ」
「落ちつけ、シンシア」
今にも飛びかかろうとするシンシアをラグナロクが止めた。
「そうか。ラーニャを殺したのはそなたか」
指先を男に向けたラグナロクは。
「余が身内に手を出すとは、死ぬ覚悟があるらしい」
雷を起こした。
詠唱なしで、天災を操る実力。
男とてひとたまりもない、第一、光のスピードに男が対応できるとも思ってなかった。
――そう、思ってなかったのだ。
目にしたのは、タクトを頭上にあげる姿。雷はどこにも落ちずに消え失せた。
「“定理を否定せし元素”(セオレム・ディナイアル)か」
「そう、よく分かったねえ。魔術元素そのものから存在を消す術なんだ。僕だけの特権だよ」


