割れる。
小さな割れだが、人一人は入れるものだ。
十分だった。
――男が入るには。
夜空から落ちる男は、途中、重力でも操ったか綺麗に着地してみせた。
「綺麗な庭だ。いいねえ、僕の城もこうしようか」
「ラグナロク様、あいつが……!」
「皆まで言うな。なんとまがまがしいことか」
汚いものでも見る目付きに男は笑ってみせた。
「心外だなぁ、見た目は人間とそう変わりないはずだろう?ラグナロク、様?」
「化け物風情がよく喋る。余と話したくば、その身の内にある汚泥を拭ってからこないか」
「汚泥だなんてひどいな。これはね、幾万の人々が生きた証なんだ」
お腹をさする男はぺろりと舌を出した。
「さすがはラグナロク様だ。おいしそうに出来ている」


