「暴走だと?あいつが何かしたわけじゃないのか」
「厳密にはな、ただきっかけを作ったのには変わりない。ユーリは今、己が力を制御できずに眠りについている」
「時の力をか」
「なんだ、知っていたのか。いかにも、昔の記憶を停止させていたのに、再生された。それを再び巻き戻そうと、とこんな具合の繰り返しで整理がつかずパニックで脳が壊れる前に眠りについたんだろう」
過去と聞き、姫の言葉をシブリールは思い出した。
辛い過去。
シブリールはユリウスが小さいころに両親を亡くしたというのしか知らない。
他に辛いことなど、あの村にいればないはずだが。
「――、どうやら、虫が入ってきたようだな」
ラグナロクが上を向く。
釣られて見れば、夜空にヒビが入った。


