(ニ)
シブリールたちが行き着いた場所はバラの庭園だった。
夜しか巡らないラグナロクの箱庭だ。
「ユリウス、ユリウス!」
必死に叫び続けるもユリウスはいっこうに起きる気配はない。
彼女を一番に思う彼にとっては怒りが芽生えた。
「あいつはなんなんだ、ええっ」
「怒鳴らないでくださいましっ。私だって、いきなりあいつに……!」
八つ当たり気味になる両者。そこに水を差したのは箱庭の主だった。
「どうかしたのかえ?」
真紅のドレスを身にまとったラグナロクは、二人の視線を奪った。
「ババア、ユリウスがっ」
「ラグナロク様、あいつがっ」
「待て待て、二人いっぺんに話されても困る。そうだな、まずはシンシアから聞こうぞ」
「襲われました……。東ベルク帝国の王を名乗るものに」


