「僕のために生きててくれたんだね、ユリウス。とても嬉しいよ」
「貴様……!」
ユリウスを知っているそぶりをする男が気にくわなかった。
何せ、目がいけない。
ユリウスを見るその目は、まるで舐め回すようで。
「ああ、美味しそうに育って。僕好みだよ、君は昔から」
「っ、【炎球、発射、焼き尽くせ!】」
シブリールの詠唱から火炎がうまれた。発砲玉らしく男に向かったが、無効に終わった。
指揮者が持つタクトを振っただけで魔術がキャンセルさせられたのだ。
「なに……」
「薄い魔術だ。前奏にもならない」
こんこんとタクトで手を叩き、講師みたく男は言った。
「そういえば、君、何?僕のユリウスにだいぶ馴れ馴れしいけど」
「僕のだと……」


