「姫様……」


「あなたに何があったのかは私には分からない。ですが、自分の本当の力を拒絶するまでだ、きっと余程のことがあったのでしょう」


思い出がまばらだった。


パズルにしたらピースの多くが欠けている。


「私、思い出が……」


「そこも時がなかったことにしようとしているのでしょう。思い出を思い出さないように停止したままだ。

なら思い出さない方がいいかもしれない。ですがね、ユーリさん、あなたはいつか思い出すでしょう。その変調が見えはじめている」


預言者は語る。


「何物にも辛い現実が待っている。でも、負けてはいけません。人は過去を背負って生きていくのですから」


姫様は今度はシブリールさんに向き直った。


「ユーリさんを愛しているなら、守ってあげてください。人を助けるのはいつだって、誰かの想いなのですから」