「姫様は?」
「姫は今、本気を出している」
「本気?」
「ああ、この時間あたりになると本気で執務にとりかかるんだ。成果がティータイムを左右すっから。悪ければ紅茶だけになるし、良ければお菓子つき。更に良ければ二品に増えるという」
餌を前に必死に尻尾 振る犬を連想した。
上手く飼い慣らしているというか、普段、執務していないのか。
「多分、お前もいっから本気に拍車かかってんじゃないのか。ゆっくりと話したいと思っているだろうし」
「そんな、私なんかと……」
「同年代の女は久々なんだ。いっつも来るのは町の老人や子供ばかりだから。その……姫と仲良くしてやってくれ」
「クロスさんは本当に姫様が好きなんですね」
「す、すす、好きって」
ラブじゃなくてライク側の好きで言ったつもりだけど、クロスさんは椅子から立ち上がるほど焦った。


