この屋敷の番犬か。だとしたら部外者の私たちは吠えられると思ったのだが、犬は黙ったままだった。
「とんでもないものを飼っているな……。何者だ、ここの主は」
「え、ただの犬じゃ」
ないのだろう。
シブリールさんが警戒している。
犬はそんな私たちを見たあと、歩き出した。そうして止まってこちらを見る。
「ついてこい、か」
シンシアさんの猫と同じ道案内をしてくれるらしい。
とつとつとついていけば、屋敷の入り口についた。
木製の二枚扉の前にお座りするなり、爪でガリガリ音を出した。
「いつも言っているだろう、マンナカ」
扉が開いた。
「扉を引っ掻くなとあれほど――ん?」
犬に話しかけていた屋敷の住人が私たちを見つける。


