ちゆまど―世界は全て君のために―



「本当にここが……違う世界」


私たちがいた世界となんら変わりがないような気がした。


「そうだね。俺たちがいた場所と似ているんだろう、きっと」


明るい日差し。太陽は一つ。空を飛ぶ鳥もどこかで見たようなもの。


「行こうか」


どこに、と聞かずとも分かった。


背後にあったから気づかなかったけど、大きな屋敷があった。


年月が経っているのか、白い壁は少し廃れている。


それを補うように綺麗な花が植えられていた。


「この中に……?」


「恐らくは……いや、絶対。ひどい気配だ」


シブリールさんには何が分かるのか、顔を濁らせていた。


しばらく屋敷を見ている内に、角から黒い犬がやってくる。


ドーベルマンみたいなかっこいい大型犬だ。