久しぶりの外出に、どんな反応が返ってくるのか不安だったカトレアは、なるべく気付かれないように、ゆっくりと扉を開けたのである。

なるべく音を発てないように扉を閉め、振り返るとそこにはマリアが立っていたのだ。

マリアはエプロン姿で、夕飯を作っていたのであろう。手にはオタマを持っている。

「ママ!おかえりなさい。」

びっくりした表情ではあるが、どことなくうれしそうに声は弾んでいる。

「・・・ただいま」

「元気になったのね。・・・良かった・・・。これから急いで夕飯作るわね。」

そう行ってマリアは背中を向け、キッチンへと戻って行った。

気のせいかマリアが後ろを向いた時、手で涙を拭ったように思えた・・・。


その日の夜は、ロイドが居なくなってから、初めての家族揃っての夕飯である。

そして妙に口数の多いマリアに、ようやくカトレアに笑顔が戻った日であった。