スーッ…と、ふすまが開く。

その向こうに正座している若い男が居た。

深々と頭を下げた。

『惣一郎様、お食事をお持ち致しました。』

『あ…りが…とう…』

声にならないほどのかすれた声で、布団に横たわる惣一郎と呼ばれた老人が返答した。

あぁ…なんで今日も目覚めたのだろう…。

ワシの超治癒力…違っていた…違ってたんだ…。

これは治癒なんかじゃない…不死だ…。

あれから車に引かれたり、火事に巻き込まれたりした。

地震で瓦礫の下敷きになったりなんてこともあったな…。

全部死んでいた…はずだった…。

それでも、身体は無傷だった…。

いや、無傷にまで回復していた。

みんな…死んでしまった…父も母も姉、妹、弟までも…先に逝ってしまった…。

妻も子、孫…誰ももう誰も居ない…。

曾孫位になると、もうワシに寄りつかなかった。

この男は、姉の血筋で能力者だ…。

姉の子孫に、能力者の相談役として世話をして貰っている…。

自殺しようと…飛び降りた事も…首をつっても…ムダだった…。