恋模様




−ダァッ−



彼女が去った後、会場は騒がしかった



俺はそこに取り残されたかのような感覚だった



「柊さん……」



「何で追いかけないんだ?」



「えっ?」



後ろを振り向くと、そこにはさっきの質問者である康弘と日村さんがいた



「何で追い掛けないって聞いてんだ」



穏やかで、威厳のある康弘の言葉



「何でって…、俺が追って行ったって何も変わらないじゃないか…」



「敦、てめ…」
−バチンッ−



頬に痛みが走る



「円香!!」



日村さんに打たれたのだと気付く



「何も変わらないって?冗談じゃないわよっ。変えようと思わなければ、変えられないの」



日村さんの言葉が胸に響く



「ねぇ、敦君。知ってる?爽はあの日あなたに………」



その先の言葉を聞くや否や、俺は走り出していた



「爽はあの日、あなたに好きだと伝えようとしていたのよ」



俺は馬鹿な人間だ



勝手なこと言って傷付けて、それで幸せになって欲しいなんか…



俺の手が君に届くのであれば、もう1度…



あの笑顔を…………