「柊さ…」
−ガバッ−
胸倉を掴まれてしまった
「何が幸せだよ。今度はあたしの話も聞けッ」
涙のせいなのか、俺の知っている柊さんピースに一つもはまらなかった
「あたし、あたしはなっ、ずっと苦しんでた。馬鹿だろう?お前の言葉の裏なんか、感じずにただ泣いていたんだ」
柊さん……
「あたしの涙を返しやがれっ」
掴まれた胸倉から彼女の怒りが伝わってきた
「付き合ってるだ?そんなはずねぇだろうがっ。心にも想っていないやつと付き合ったって、それで本当に幸せになれるとでもてめぇは思ってたんかよ!?」
そうだ、これは俺が無理矢理押し付けた幸せなのだ
「ごめん……」
「っ……、あたしは、そんな言葉が欲しかったわけじゃないんだッ」
突き放される手
涙ぐむ彼女の顔
一瞬の出来事のようだった

