恋模様




「そして、二度と顔を合わせることが出来なくなりました。単に僕が転校したんです」



−二度とあたしの前に現れんじゃねぇッ!!−



あたしが敦に放った言葉



その言葉の重みに気付いた時、彼はもういなかった



「転校する僕が彼女に何が出来るかって考えたとき、1番に彼女の笑っている顔が浮かんだんです。彼女の幸せを考えるべきだと思ったんです」



あたしの幸せ?



「だから、僕はあえて彼女を遠ざけるようなことをしました。早く僕を忘れて、幸せになって欲しいとそんな考えで…」



廊下での会話が蘇る



あの言葉一つ一つに、あたしの幸せへの願いが込められていたっ……



あたしは気付かなかった



自然と涙腺が緩む



「そしてこの写真は、僕の彼女に対する恋模様です。こんなこと今更僕が言うと言うのもおかしなことですが、彼女は僕がいなくても充分に幸せだと思うので…。そんな彼女への感謝を込めて、僕に恋をありがとう」



「っぁ………」



抑え切れない涙が溢れてきた



ありがとうはこっち。あたしもあんたに出会わなければきっと、恋なんか知らずに生きていたと思うから……



でも、



遠回りすぎだよ…



「長い僕の思い出話をすみません。以上で…」



「はいっ、質問です」



誰かが挙手をした