そう思いながらイチゴの花を目で追いかけているとき、なにかふっと気配みたいなものを感じて、私はそのイチゴの花から目を離すことができなかった。
そうするとそのイチゴの花はゆっくりと折りたたまれ、その下から真紅の口紅をつけた目の大きな少女が上を見上げた。

雨で綺麗な髪が濡れているというのに、その子はただ立ち止まって私の顔をじっとみていた。思わず息をのんだ。

赤い長靴がかすかに記憶にある気がしたのは、私も幼い頃いつも好んで、赤い長靴を履いていたからだろう。
私の脳裏にはとても甘くやさしい何かが流れた。そして、そのあと心が締め付けられるような泣きたい衝動にかられ、しんちゃんにしがみついた。

「ミサ、どうした?」

「・・・わからない。」

そんな自分を少しおかしく思いながら、しんちゃんの暖かさを感じていた。
しんちゃんが私をみながらフフフと笑った。

そうこの笑顔、この笑顔を見逃すまいと私はいつも真剣になるのだが、そのときばかりは黙ってしんちゃんと自分の鼓動を聞いていた。