「どこかいこうよ。」

「だけど、今日は雨だし、寒いよ。」

「しんちゃんといるときはいつも雨だもの。どこにもいけないよ。」

そういって結局私たちは家の中に居た。
雨が降っているので、私は外ばかり見ていた。

しんちゃんは壁に絵を描く仕事をしていてそれは屋外でする作業が多いので雨の日は休みになることが多い。だから決まってしんちゃんは雨がふってから私の家に来た。


私は昔から雨の日が結構好きだ。

そういうと不思議そうにしんちゃんは私の顔をみて、少し嬉しそうに笑うのだ。
私の住んでいるところは5階で、今日みたいな日はここに引っ越してきてよかったと思う。
雨の日は外を見れば色とりどりの花が咲いているから。
私の背の高さでは分からない花がここからだと分かるのだ。

傘の花。


「しんちゃん、花がきれいだ。」

「本当だ。」

「私はあのイチゴ柄の花が好き。」


幼い頃、そんなに強くない雨の日は縁側に座っていた。

雨の日は友達のなおちゃんともみいちゃんとも外で遊ぶことができないから、仕方なく私は外を眺めていた。

私の家の縁側に出る大きなガラス戸のそばには、大きなアジサイがありいつも梅雨時期になると、紫色のきれいな花を満開にさせて私の部屋を覗いていた。微妙に重そうなその花が、頭を一所懸命支えて私のほうを見ているような気がして、私はいつも「かんばって」と心の中で応援した。

それにだ。雨の日は、水滴がまるで宝石のように葉の上に落ちる。
そして、ほのかに香る土のにおい。


私は水滴がきらきらしているのを見るのが好きで、いつしか雨の日は窓のそばか縁側にいた。花たちが雨の水滴でおめかしをするのだ。

大人になったら、東京にきたりしたから、そのワクワク感は減ったけど、今はしんちゃんが雨の日は決まって私の傍に居るし、それに、もうひとつ雨の日の彩を私は発見することができたから、私はすごく幸せ者なのだ。