和麻(カズマ)は蜂蜜が好きだった。

コーヒーでもパンでも何でも蜂蜜を使った。
だから私も真似して蜂蜜を使った。

そんな和麻は私の前からふっと消えていった。

小さなカエルのぬいぐるみを残して。
だから私はそのぬいぐるみをいつも和麻だと思っていまも大事にしまってある。

これは私と和麻との絆。

私は人の好みを当てるのがいまいち下手で、贈り物に失敗することが多いのだが、その中でも唯一カエルは和麻の顔を笑顔にさせた。
次の日同じぬいぐるみが私のベッドの上に置いてあったから、てっきり私はまた失敗してしまったのかとがっくりしたけれど、どうやらそれは和麻が私にも「おそろい」を買ってくれたようだった。

「赤い庇のあの店でみつけたから。」

そういって笑っていた。

いまから振り返るだけでも、和麻と一緒にいた日々はとても幻想的なのだ。
それは私のとても綺麗な部分としてほのかに甘い香りを残しながら、いまも心に残っている。


はちみつのかおりのように。