沙耶が教室に帰ってから10分ぐらいが経った頃。ガラガラッと扉が開く音がした。 先生かな? そう思ってたけど、どうもあたしの予想は当たらないらしい。 また、違った。 「綾」 翔平だった―――… 「翔平、今授業中じゃ……」 「うん。でも、ま……授業より彼女の方が大切じゃん?」 きゅーん…… 盗まれた。あたしの心。 「で、大丈夫?」 「もう、全然平気」 「そっか」 そう言いながら翔平はあたしの前髪に優しく触れていて。 あたしの神経はそっちに集中している。