いやいや、でも、よく考えたらね?
ふつう、見るからに泣いている女の子に、こんなふうに話しかけてくる?
しかも第一声、わたしの聴覚に異常がなければジャマって言った。
人生においてなかなかこんな場面に遭遇することもないと思うから、そんなのもべつにないのかもしれないけど。
でもふつうなら、こういうときは知らんぷりするか、まず優しい言葉をかけるものなんじゃない?
そうだよ、
どう考えてもいちばん最初にジャマはありえない。
さてはこの人、血も涙もない冷酷人間――
「そのひどい顔、やたらと世間に晒さないほうがいいんじゃない?」
もういちど顔を上げ、キッとにらみつけたとき、彼はもうすでにわたしを見下ろしていた。
それも悲しくなるほどに冷たいまなざしで。
「なにがあったかは興味ないけど」
吐き捨てるように言い、すぐにぷいと視線を外す。
「べつに……ただの失恋です」
せっかくこっちがしゃべったのに、彼はなにも言わず、それどころかこちらを一瞬たりとも見ようともせず、完全無視をかましてきた。
「……でもぜんぜん平気なので」
これも、無視。
なんなの。なんでなんにも答えないの。ちょっとさすがにむかついてきたんですけど。
むかついたらさらに涙が出てきた。
でももういいや。泣いちゃえ。
どうせすでに変人決定だ。



