いざ行ってみると、2年生よりも先輩の教室のほうがぜんぜんガラガラだった。
もしかしたらユウくんもすでに帰ってしまったかもしれない。
連絡を無視されたのか、本当に気づかなかったのか、わからないけど。
前者ならそんなのは考えたくもないけど。
「――水無月さ、あんまテキトーな態度はとらないほうがいいんじゃないの」
ほとんど生徒がいないせいで、前回よりうんとスムーズにたどり着けた3年4組の教室。
どうせ誰もいないだろうと遠慮なく顔を覗かせようとしたところで、いきなりそんな台詞が耳に飛びこんできたので、あわてて体を物陰に引っこめた。
「相手も感情がある人間なんだしさ」
水無月、と呼びかけたのは、たぶんこないだ親切にしてくれたあの先輩だと思う。
穏やかなしゃべり方が特徴的だな。
「むこうは好意をもってくれてるわけじゃん」
「めんどいよ」
文字通り、心底めんどいって感じに、もはや声帯を使うのさえ億劫そうに、ユウくんが声を出した。
なんの話をしているんだろう?
なんだか妙に真剣な雰囲気だから出るに出られないのに、気になるから帰ることもできない。
「その気がないなら曖昧な態度とって、期待させないほうがいいんじゃないかって俺は思う」
「……まあ」
「あの、望月さんっていったっけ? こないだ来てた、2年のコ。かわいそうだよ」
実際のところわからないけれど、その衝撃の重さ、推定10トン。
「……なに……?」
なんで、ここで、わたしの名前が出てくるの?



