「あたし、水無月先輩がルンルンとメッセ送ってくる姿のほうが想像できないけど」
キモチワル、みたいな、容赦ない表情でキョンが肩をすくめた。
「ねえカンナ。待ってるだけじゃなんも変わんないよ?」
「はい、わかってます……」
「ほんとかあ?」
ぺろり、のれんみたいに前髪を持ち上げられる。
ユウくんがさわったあの日から、本当に切っていないんだもんな。
そろそろピンで押さえておかないと目にかかってけっこう痛い。
「……会いに行こうかな」
「おお」
「連絡してみる」
「いまから?」
「うん」
放課後になり、すでにぱらぱらと人が減り始めた教室。
ユウくんのクラスももう帰りのホームルームは終わったかな。
ユウくん、部活はやっていないから、すぐに帰ってしまうかも。
『ユウくん、放課後って暇ですか』
通知をオフにしているというわりにはすぐに開封されて、ちょっと面食らった。
『うんひま』
句読点を使うのも、変換するのさえ、面倒くさいんだろうな。
ひらがな4文字の返事がすごくユウくんらしい。
『まだ教室にいますか』
だけど次のメッセージは、待てど暮らせど開封されず。
キョンもいっしょになって待ってくれていたけど、20分ほど経過したところでわたしのほうがしびれを切らした。
「ちょっと3年4組まで行ってみる」
「え、どしたの、いきなり行動派じゃん」
「だって……ひょっとしたらなんかあったのかもしれないし」
そんなこと言いつつ、どうにもそわそわしているのが自分でもわかる。
だって、勇気をふりしぼって連絡をしてみたらすぐに返事をくれた。
たったそれだけのことでこんなにもうれしくなって、あんなにびびり倒していた先輩の教室へ行こうとしているのだから、わたしって救いようがないよね。



