みずいろレボリューション

𓂃◌𓈒𓐍


「うわあああんっ……!!」

「いやいや、店に知り合いがいないかはちゃっかり確認するくせに、学校では人目もはばからず泣くんかい」


失恋したての親友を慰めることもせず、冷静にツッコミを入れるキョン。

人がこんなにも泣いているというのに、容赦なく傷に塩を塗りたくってくるとは。


「だって……だって」

「はいはい、よしよし、悲しかったねえ」

「ううっ」


ほんとに慰める気あるのかな。

それでも、確実にブレザーが濡れることをわかっていながら、胸に飛びこむわたしをしっかり受け止めてくれる彼女はなかなかに寛大だと思う。


「てゆーか。だからあたし最初に言ったじゃん、あのテの男はあんまりおすすめしないって」


よーしよし、と腕のなかに抱えた頭を撫でながら、キョンがため息まじりにつぶやく。


「う……でもヤスくん、優しかったもん」

「そんなのはじめのうちだけ」


そんなことない。
ヤスくんは最初から最後までちゃんと優しかった。

でも彼のそれは、たとえば計りで重さを調べたら、誰に対してもきっちり同じだけの分量だったかもしれない。

男子、女子、年齢、国籍、ヤスくんにはそんな括り、きっと関係ない。

平等な人だと謳えばとてもポジティブに聞こえるね。

だけどわたしは、どうしても彼にとっての特別でありたかったのだ。

そう、せめてヤスくんにとっての“彼女”でいた期間くらいは。


「あんなしょーもない男のために泣く暇があるなら、カンナも早いとこ経験値上げな?」


そう言うキョンは経験がありすぎるんだよ。
中2で初えっちって、どこのシティガールだよ。

と、反論できないのは、たしかにわたしの恋愛経験値がほぼゼロ、むしろマイナスだから。

なにを隠そう、悲しいかな、まだヤスくん以外の誰かとマトモに恋愛をしたことがないの。