そしてそのとき、わたしの隣にいるのはユウくんがいいなあ……なんて。
そんなおこがましい想いは、胸のうちだけにとどめておこう。
次は絶対に、モブ男子その30と、身の丈に合った幸せな恋をするって決めているんだ。
「そろそろ戻らないと」
ポケットからスマホを取り出して時刻を確認したユウくんが、もたれかかっていた柵からあっけなく体を離した。
「あっ、着替え、ありがとう。うちの柔軟剤のにおい、お花のにおいでちょっとキツイかもだから、もしアレだったら手間だけどもういっかい洗って……」
「どうも」
さっき前髪にさわった指先が、紙袋の持ち手を簡単に奪っていく。
ああ、手渡してしまった。
もうこれで、ユウくんとわたしが会う理由、完全に消滅してしまった。
「っ、ユウ、くん」
こんなにもわかりきっているのに、なんで。
ぜんぜん止められない。
歯止めがきかない。
どうしてわたしってこうもばかなの。
「あの……」
すでに歩き始めていた足が止まり、ゆっくりと、わたしをふり返った。
「また会えるんじゃない?」
「え……」
心のなか、ぜんぶ見透かされてる。
「あんたが会いたいと思うなら」
ユウくん、向いてないからたいがいにしろって、もういちど叱ってもらってもいいかな。
だってね。
自分ではすでにどうしようもないくらい、たぶんもう、心まるごと奪われてしまったよ。
𓂃◌𓈒𓐍



