みずいろレボリューション

𓂃◌𓈒𓐍


それでも借りていたものはきちんと返さなければならない。


家族の洗濯物とは別にして、丁寧に洗濯機をまわし、Tシャツにはアイロンをかけ、ジャージは時間をかけてたたんだ。

男ものだとお母さんにからかわれ、お兄ちゃんには不審がられた。


先輩ばかりのいる3年生の教室はどうしても緊張する。

みんな、水色のネクタイだ。
当たり前だ。

黄色のネクタイをものめずらしそうに見る先輩たちの視線にとても耐えられず、うつむきがちに4組を探していたら相当な時間がかかってしまった。


いばらの道を突き進んだ先で、ユウくんの在籍しているらしい教室をやっと発見。

だけどその中を覗きこむ勇気も、名前をなれなれしく呼ぶ勇気も、ちょっと持ち合わせていないよ。

こんなことならキョンについてきてもらえばよかった。

からかわれるのが嫌で、ひとりで行けるもん、と啖呵を切った数分前の自分にゲンコツしてやりたい。


「どうしよう……」


ひとりごとにさえなれなかったかすかな声が口のなかで消えていく。

その間にも好奇の目は向けられ続けていた。

先輩って、どうして1年早く生まれただけなのに、こんなに強い気がしてしまうんだろう。


「――どうかしたの?」


天使の声かと思った。

やわらかいそれに顔を上げる。

男の先輩だった。
声と同じ、優しい印象のひとえのたれ目が、伺うようにわたしを映している。

なぜか激しく安心した。


「2年生だよね。うちのクラスになんか用事?」

「あ……えと、わたし」


精いっぱい発声しているはずなのに、蚊の鳴くような音しか出なくて恥ずかしい。

緊張しているのがバレバレだ。