イケメンくん――ヤスくんとの出会いは、高1の終わりに参加した合コンで。
高校生になったら誰もが自動的に彼氏ができると信じていたのに、1年たってもいっこうに気配すらないわたしを見かねて、友達がわざわざセッティングしてくれた会だった。
そう、合コンというものに参加するのも、わたしは人生ではじめてのことだったんだ。
『カンナちゃん、抜けてんね』
それが、最初の会話。
その場にいた誰よりもかっこよかったけど、見るからに軽くてチャラそうな感じがしたから、第一印象はあんまりだった、はずなのに。
お店のちょっとした段差でずっこけたわたしを受け止めて見せてくれた、やさしい微笑みに。
その、甘ったるい台詞に。
『なんか守ってあげたくなる』
わたしは、簡単に恋をしたんだ。
空っぽになった対面のカラフルなソファを見つめながら、まだほんの3か月ほど前の出来事を思い出していた。
嬉しかったこと、楽しかったこと、優しくしてもらったこと。
そんなのばかりを思い出しちゃうのはなんなんだろ。
ずっとカンナちゃんが大好きだよ、いっしょにいようね、って言ってくれたのに。
「……うそつき」
待受画面を初期設定に戻したついでに、ヤスくんとの写真をぜんぶ消去した。連絡先も。なにもかも。
さようなら、初彼。
さようなら、初恋。
どんどんしょっぱくなっていく苺味を気合だけで飲みきり、ひとりさみしくお店を出た。
𓂃◌𓈒𓐍



