ユウくんのものだというジャージはかなりブカブカで、わたしのようなちんちくりんが着ると、目も当てられないほど不格好な出来上がりになってしまった。
それでもぐしょぐしょの制服よりは100倍快適だ。
「サイズ合ってなくね」
時代劇のような裾で現れたわたしを見るやいなや、ソファで週刊の漫画誌を読んでいたサラくんが兄を呼ぶ。
「ユウよりおれのやつのほうがいい気がする」
「いいよべつに」
兄は面倒くさそうに応答し、脱いだ制服を入れるためのビニール袋を着替え済みの後輩に手渡した。
「送ってく」
「えっ、いいよ、そんな、もう暗くなってきたし!」
「だから送るって言ってるんだけど」
その肩越しに、それはふいに、目に飛びこんできたのだった。
「あ……」
さっきまできっちり閉じられていたはずの、和室へ繋がる扉。
開け放たれたその奥のほうに、お仏壇、のようなものが見えた。
さっき無粋なことを考えてしまったのを深く後悔する。
ユウくんとサラくんのお母さんは、きっと亡くなって、ふたりの元を離れていったんだ。
あれを見てしまった以上、無視して帰るなんてことはとてもできなくて。
「ユウくん。もしよければ、あの、手……合わせてもいいかな?」
彼はかなり驚いた様子だった。
「おじゃましました、って言いたくて。ご家族に無言で帰りたくないなって」
こんなぽっと出の後輩が、差し出がましいのは重々わかってる。
「いいよ」
だけどユウくんは少し笑ってそう言った。
もういじわるな感じの笑みじゃない。
「ありがとう」
何気なく続いた言葉に、胸がぎゅうっと苦しくなる。



